この1週間で、ちょっとだけ春気分から真冬へ・・・、というぐらいの温度差です。
今日も寒いですね。
冷たい雪が降った火曜日、3月の展示会のための現地打ち合わせでmAAchi ecuteまんせいばしへ行きました。
あらためて、こんなに雰囲気のある場所での展覧会に関われることにわくわくです。
で、最近はまとまった作品数を作り上げるため、うちにいる時間をできるだけ多くして、出かける用事がある日には出先でなるべくたくさんのことをするようにしています。
この日は、上野の国立博物館、平成館にて開催中のクリーブランド美術館展へ行きました。
実はこの美術館、とても思い出があるのです。
クリーブランドはアメリカ、オハイオ州の北東部にある州最大都市で、シンシナティ在住時にそのクリーブランド美術館へ行きました。
その時、今回も紹介されている日本美術品、特に屏風、の特別展が開催されていました。
アメリカに住んで1、2年の頃で、きっと里心も付いていたのでしょう。
広い展示空間に置かれている数々の屏風を見て、その美しさに感動し、日本の美術品に誇りを感じました。
さらに、屏風の形状を利用した表現方法やその美学など、日本美術の繊細さと、そこに同居する強い信念と哲学に感心したものです。
アメリカの美術館にそんなことを教えられることにも驚きました。
たぶん、その頃から、日本美術への興味がどんどん深くなったのだと思います。
西洋美術の美しさはもちろんですが、日本美術には美しさだけでなく、その空気感や背景にある文化を感じることができる分、たくさんのことを読み取ることができるのでしょう。日本人の遺伝子ですね。
そんなことを、あらためて覚えた美術館です。
あのときクリーブランドで見た燕子花図屏風に、日本でまた出会える巡り合わせに不思議を感じた展覧会でした。
同時開催の人間国宝展。最後に駆け足で見て回りました。
これまた、溜息もの。なんと美しい堆朱、漆、着物・・・。
私は小さな贅沢おちょこを集めています。
そりゃね、名のある人間国宝が作った大皿とか茶器とか愛でるのは好きですが、何しろ我が家の生活には釣り合いがとれません。
その代わりにお酒を飲むときのちいさな幸せ、人間国宝おちょこです。
写真は私の宝物の中から、左は人間国宝三代目徳田八十吉、右はその娘、四代目のものです。
徳田八十吉もそうですが、持っているおちょこの作者と同じ名前をいくつか見つけ、小さな幸せ二次効果も感じることができて、にんまり。
日本美術といえば、すでに終わってしまいましたが、先月行った日本刺繍の草乃しずかの世界展はこれまた素晴らしかったです。
これも、やはり日本人感性を持っていることをありがたく思った展覧会でした。
彼女の刺繍に対する姿勢と哲学、もちろんその技術や工夫には本当に敬服です。
会場全体に漂う幻想的な雰囲気、多分それは絹地や絹糸が紡ぎ出すものなのでしょうが、その中ではっきりと意志を持った刺繍の柄達が浮かび上がり、なんだか夢の中にいるような、そんな気分でした。
とくに源氏物語を基にした一連の作品がとても好きでした。単に、物語をなぞるだけではなく、その主人公や出来事から思い起こされる自然や風景、小物を刺した作品はどれだけ見ていても見飽きませんでした。
数週間も前のことなのに、鮮やかによみがえります。もう一度源氏物語を読もうかな・・・、と思います。
遠い遠い存在ではありますが、同じものを作り上げる、という点では、いろいろな刺激やひらめきをもらいました。
そんなわけで、想像力の充填には外からの刺激は必須、ということで、予定がある日はついでに何かを見るように調整をしているこの頃です。
そして、火曜日は平成館から出てみたらすでに雪景色。
コートの襟を立て冷たい風の中を歩き出しましたが、気づけば夕方5時でこの明るさ。
ホッと、春の足音を聞いた気がした、立春のぼたん雪でした。
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